「高揚しています!」とチャットで送り、自席を凍りつかせた若かりし日の僕
「いやー、今回のプロジェクト、チーム一丸となって成果を出せましたね!今の僕の気持ちは、まさに高揚の一言に尽きます!」
……今思い出すだけでも、冷や汗どころか脂汗が全身から吹き出しそうになる失敗です。
若手時代、大きな案件を無事に受注できた興奮冷めやらぬまま、勢いだけでSlackのチームチャンネルに書き込んだこの一言。画面の向こうで上司がどんな顔をしていたか、当時の僕には想像もつきませんでした。
送信して数分後、普段はすぐにスタンプがつくチャンネルが不気味なほど静まり返り、見かねた直属の先輩がそっと僕の席にやってきて、「おい……お前、チャットの文面、ちょっとトゲがあるというか、なんというか……一人で勝手に盛り上がってないか?」と耳打ちしてくれたのです。
「え? 感謝と喜びを伝えているだけですが何か?」と本気で思っていた当時の自分を、タイムマシンに乗って全力で引っ叩きに行きたい。
30代になり、今ではすっかり中堅の「板挟み中間管理職」となった僕ですが、あの時のような若気の至りによるコミュニケーションの失敗は、後輩の指導や上司への報告のたびにトラウマとして蘇ります。
特に「感謝」や「ねぎらい」の気持ちを伝えようと意気込むあまり、気負ったビジネス用語や感情をダイレクトに表す言葉を使ってしまい、相手をポカンとさせてしまった経験はありませんか?
今回は、そんな「高揚」という言葉に隠された意外な落とし穴と、ビジネスシーンで角を立てずに最高の感謝を伝える「大人の言い換え術」を、僕の苦い失敗談と共にお届けします。
なぜ「高揚」という言葉はビジネスシーンで地雷になってしまうのか?
そもそも、「高揚(こうよう)」という言葉の意味を辞書で引いてみると、「気分が高ぶること。気持ちが盛り上がること」とあります。
スポーツの試合で士気が高まったり、お祭りでテンションが上がったりするような場面では非常に適した言葉です。
しかし、これをビジネスの場、特にチャットツールやメールでの「感謝やねぎらい」の文脈で使ってしまうと、相手には以下のようなネガティブな印象を与えてしまうのです。
- 「自分語り」に聞こえる:チームの成果ではなく、「自分がどれだけテンションが上がっているか」という個人の感情にフォーカスしているように感じられ、周囲が冷めてしまう。
- 情緒不安定な印象を与える:ビジネスにおいて感情の起伏が激しすぎる人物は、「冷静な判断ができないのではないか」という不信感につながる。
- 上から目線に感じられる:「私の心を高揚させてくれてありがとう」というニュアンスがどこかに滲み出てしまい、相手を評価しているような横柄な響きを持ってしまう。
僕がまさにこの典型でした。「みんなのおかげで最高に盛り上がっている俺カッコいい!」という自己陶酔が、あの日のチャットの行間からダダ漏れしていたんだと思います。そりゃあ上司もフリーズしますし、チームの空気も凍りつきますよね。
言葉のチョイス一つで、せっかくの「ありがたい成果」が「痛い若者の独り言」に格下げされてしまう。ビジネスのコミュニケーションって、本当に恐ろしいものです。
ちなみに、こうした言葉選びの失敗については、以前こんな記事でも詳しく書いているので、ぜひ参考にしてみてくださいね(「称揚します!」で上司がフリーズ…?感謝のつもりが地雷を踏む30代からの『大人の言い換え術』)。
ここで、大人な言い換えの登場です…!
では、プロジェクトの成功に対する熱い感謝や、仲間へのねぎらいの気持ちを伝えたい時、私たちはどんな言葉を使えばスマートなのでしょうか?
「高揚」という危うい言葉を封印し、相手の心にじんわりと響く、30代の大人の言い換えフレーズをご紹介します。
1. 自分の興奮ではなく「チームへの感謝」に変換する
【NGな表現】「今回の成功で、僕のモチベーションは今、最高潮に高揚しています!」
【大人のスマートな言い換え】
「皆様の多大なるご尽力のおかげで、このような素晴らしい成果を収めることができ、心より感謝しております。この勢いを大切に、明日からも引き締めてまいります。」
<ここがポイント>
自分の「高揚感」を主語にするのではなく、相手の「尽力」を主語にするのが大人の鉄則です。さらに、「この勢いを大切に」と付け加えることで、浮かれすぎず、かつ前向きなエネルギーがあることをスマートに伝えることができます。
2. 感情の爆発ではなく「胸が熱くなる思い」に変換する
【NGな表現】「チームの団結力に高揚感を禁じ得ません!」
【大人のスマートな言い換え】
「皆様とご一緒できたこのプロジェクトを通じて、非常に胸が熱くなる思いです。本当にありがとうございます。」
<ここがポイント>
「高揚」という硬くて少し暑苦しい漢字熟語を、「胸が熱くなる」という日本語らしい表現に柔らかく翻訳します。これなら、相手も「あ、この人は本気で感動してくれているんだな」と素直に受け止めることができます。
まとめ:チャットの送信ボタンを押す前に、一呼吸置く大人の余裕を
リモートワークやSlackなどのチャットツールが普及した現代、私たちは毎日膨大なテキストをやり取りしています。
画面の向こうにいるのは感情を持った人間なのに、ついつい自分の勢いのままキーボードを叩いてしまい、後から冷や汗をかく……そんな失敗は、30代を走る私たち中間管理職なら誰もが一度は通る道かもしれません。
「高揚しています!」と送って周囲をフリーズさせていた若き日の僕に言ってやりたいのは、「ビジネスにおける感謝やねぎらいとは、自分のテンションを誇示することではなく、相手の努力にスポットライトを当てることだ」ということです。
もし、あなたが今度チャットで熱い気持ちを伝えたくなった時は、送信ボタンを押す前にほんの2秒だけ指を止めてみてください。
「この言葉、相手はどう受け取るだろうか?」
「自分の高揚感ではなく、相手への感謝がちゃんと伝わる表現になっているだろうか?」
そのひと手間こそが、周囲からの信頼を生み、あなたを真にスマートなビジネスパーソンへと引き上げてくれるはずです。お互い、大人の言葉遣いで、円滑で心地よい人間関係を作っていきましょうね!
