「追慕」の一言でオフィスが凍りついた、あの苦い思い出
「いやぁ、先輩の過去の功績を追慕しつつ、僕たちも頑張ります!」
……今思い返しても、冷や汗どころか背筋が凍るような若気の至りですね(苦笑)。あれは、社内でお世話になった大先輩の送別会でのことでした。当時30代手前で少しビジネス用語を覚えた気になっていた僕は、感謝とリスペクトを最大限に伝えようと、ちょっと文学的で重みのある「追慕」という言葉をチョイスしたんです。
しかし、その瞬間に起きたのは、周囲の完璧な沈黙。主役の先輩は乾いた笑みを浮かべ、上司からは「お前、それ……故人を偲ぶ時とかに使う言葉だぞ……まだ先輩、ピンピンして社内にいらっしゃるから!」と、その場で盛大にツッコミを入れられて大目玉を食らいました。ヒヤッとしましたね、本当にあの時は穴があったら入りたかったです。
「追慕(ついぼ)」とは、本来「亡くなった人をしのんでなつかしむこと」を意味する言葉。それを、まだバリバリ現役で転職されるだけの先輩に向けて使ってしまったという、痛恨の語彙力ミスでした。感謝を伝えたいつもりが、まるで故人扱いするような不気味なメッセージになってしまったんです。中間管理職として後輩の指導をする立場になった今、あの時の上司の冷ややかな視線を思い出しては、夜中に布団の中で悶絶しています。
感謝やねぎらいのつもりが地雷を踏む、30代の「言葉選びの罠」
僕たち30代の営業マンは、上司と後輩の間に挟まれるだけでなく、取引先や社内のベテラン層とやり取りする機会もグッと増えますよね。その中で「もっと大人っぽい、知的な表現で感謝を伝えたい」というプレッシャーから、普段使い慣れない難しい言葉を背伸びして使ってしまいがちです。
例えば、以前にご紹介した「感慨ですね」で上司がフリーズ…?感謝を伝えるつもりが地雷を踏む30代からの『大人の言い換え術』でも触れたように、言葉のニュアンスを勘違いしたまま発言してしまうと、相手は「えっ、どういう意味……?」とフリーズしてしまいます。
特に感謝やねぎらいのシーンは、相手との距離感を誤ると非常に厄介です。お世話になった先輩や上司に対して、リスペクトを示そうとして文学的すぎる言葉を選ぶと、「なんだか上から目線だな」「お悔やみみたいな言い方だな」と、思わぬ誤解や不快感を与えてしまう原因になります。ビジネスにおいて最も大切なのは「難解なボキャブラリーを披露すること」ではなく、「相手に真っ直ぐ、心地よく感謝が伝わること」なんですよね。
ここで、大人な言い換えの登場です…!
では、先輩のこれまでの歩みに対するリスペクトや、温かい感謝・ねぎらいの気持ちを、角を立てずに伝えるにはどうすればいいのでしょうか?
ここで、かつての僕のような大失敗を防ぐための「大人のスマートな言い換えフレーズ」をご紹介します。状況や相手との関係性に合わせて、ぜひ使い分けてみてくださいね。
1. 過去の功績や姿勢に深く感謝したいときの言い換え
【NGな表現】「先輩の軌跡を追慕しております」
【大人のスマートな言い換え】
「これまでの先輩の歩みや姿勢から、私たちは本当に多くのことを学ばせていただきました」
【解説】
「追慕」という重々しい言葉の代わりに、「歩み」や「姿勢」という身近で温かみのある言葉を使います。「学ばせていただいた」と自分の経験に引きつけて感謝を伝えることで、相手へのリスペクトが素直に、かつ嫌味なく伝わります。
2. 送別や節目のシーンで、これまでの労をねぎらうときの言い換え
【NGな表現】「先輩の残された足跡を追慕しつつ…」
【大人のスマートな言い換え】
「これまで引っ張っていただいた温かい背中を忘れません。本当にありがとうございます」
【解説】
文学的な表現でカッコつける必要はありません。直球で「背中を見て育ちました」「感謝しています」と伝える方が、日本のビジネスシーンでは圧倒的に好感度が高く、相手の心に響きます。
板挟みの30代だからこそ身につけたい、「温度感のある感謝術」
僕たち30代は、上司の顔色をうかがい、後輩の扱いに頭を悩ませ、取引先には気を使うという、まさに人間関係の板挟みポジションです。だからこそ、ちょっとした言葉のチョイスミスが命取りになることを、身をもって知っています。
難しい言葉を知っていることよりも、相手が「あ、この人にこう言ってもらえると嬉しいな」と感じるような、血の通った温かい言葉を選べること。それこそが、本当に仕事ができる大人のスキルなのだと、数々の大目玉を食らってきた僕は痛感しています。
「追慕」なんていう難解な言葉でカッコつけるのはやめて、まずは素直な感謝とリスペクトを、自分の言葉でしっかりと伝える。今日からSlackやチャット、そして対面の会話でも、少しだけ言葉の温度感を意識してみませんか? きっとあなたの周りの人間関係が、もっとスムーズで心地よいものに変わっていきますよ。
