「称揚します!」と言って、オフィスを氷河期に変えたあの日の記憶
いやぁ、思い出すだけでも冷や汗が背中を伝うんですが……皆さんは、良かれと思って使った褒め言葉で、相手を完全にフリーズさせてしまった経験はありませんか?あれは僕がまだ若手で、少しばかりビジネス書を読みかじって調子に乗っていた20代後半の頃のことでした。
当時、直属の上司だった課長が、難航していた大口のコンペを見事にまとめたんです。「これはすごい!チームの士気を上げるためにも、盛大に讃えなければ!」と意気込んだ僕は、朝礼の場で全社員の前でこう言い放ちました。
「課長の今回の働きぶり、本当に見事でした!心から称揚いたします!」
……言った瞬間のオフィスの静けさ、そして課長の何とも言えない苦笑いと周囲の冷ややかな視線。今でも鮮明に思い出せます。若気の至りとは恐ろしいもので、僕は本気で「褒めてやったぜ」とドヤ顔をしていたんですから、自分をタイムマシンに乗って引っ叩きに行きたいくらいです。
後で先輩の同期からコソッと言われました。「お前な、上司に向かって『称揚』なんて言葉を使うなよ。それ、目上の人が目下の人を『ほめたたえる』って意味だから、完全に上から目線だぞ」って。地獄でしたね。中間管理職になった今なら、その時の課長の複雑な心境が痛いほどよく分かります。板挟みで苦しむ僕たち30代営業マンにとって、言葉のチョイス一つで天国にも地獄にも落ちるというのは、まさにこのことです。
なぜ「称揚」は上司や取引先で地雷になってしまうのか?
さて、僕の恥ずかしい黒歴史はさておき、なぜ「称揚(しょうよう)」という言葉がビジネスシーン、特に目上の人に対して使うと危険なのでしょうか。
国語辞典を引いてみると、「称揚」とは「すぐれた点などをほめたたえること」とあります。漢字の通り、「称える(たたえる)」「揚げる(あげる)」という意味が込められています。ここで問題なのが、この言葉は基本的に「立場が上の人が、下の人間や業績を評価して褒める」というニュアンスを含んでいる点なんです。
つまり、部下が上司に対して「あなたの仕事ぶりを称揚します!」と言ってしまうと、まるで自分が審査員か何かになったかのような、強烈な「上から目線」の評価になってしまうわけですね。感謝や称賛を伝えたいだけのピュアな気持ちだったとしても、受け取る側からすれば「なんだこいつ、俺を値踏みしやがって…」と不快感や違和感を抱かせてしまう原因になります。
これと似たような失敗で、以前には「心強いですね」で上司がフリーズ!?感謝のつもりが地雷を踏む30代からの『大人の言い換え術』でもお伝えした通り、悪気のない一言が上司を凍りつかせるパターンは本当に多いんです。僕たちはついつい、ボキャブラリーを増やそうとして難しい漢字熟語を使いたがりますが、ビジネスにおいて大切なのは「賢く聞こえること」ではなく、「相手への敬意が正しく伝わること」なんですよね。
ここで、大人な言い換えの登場です…!
若かりし頃の僕のように、せっかくの感謝や称賛の気持ちを伝えたいのに、言葉のチョイスを誤って「痛い奴」認定されるのはもう絶対に避けたいところです。では、相手を持ち上げつつ、自分も下がりすぎず、かつ自然にリスペクトを伝えるにはどうすればいいのでしょうか。
ここからは、30代の私たちが現場で即座に使える、角の立たない「大人の言い換えフレーズ」をご紹介します!
1. 上司や先輩の成果を心から讃えたい時の言い換え
【NGフレーズ】
「課長の仕事ぶり、本当に称揚に値しますね!」
⇒ 審査員目線になっており、圧倒的な上から目線で相手がドン引きします。
【大人のスマートな言い換え】
「課長の〇〇におけるご尽力には、本当に頭が下がる思いです。」
「いつもながら、課長の的確なご判断と実行力には感服させられます。」
★ここがポイント:
「評価する」というスタンスではなく、「感銘を受けた」「尊敬している」という自分の内面からの矢印に変換するのがコツです。「頭が下がる」「感服する」を使うことで、相手を持ち上げつつも、自分は謙虚な姿勢を保つことができます。これなら絶対に地雷を踏みません。
2. 取引先やパートナー企業の素晴らしい実績を称えたい時の言い換え
【NGフレーズ】
「御社の今回のプロジェクト、見事な称揚ぶりが話題ですね。」
⇒ 取引先に対して使うと、なぜか「お前たちの実績を審査してやったぞ」という超絶上目線な響きになり、一発レッドカードです。
【大人のスマートな言い換え】
「御社の今回の素晴らしいお取り組み、社内でも大変勉強させていただいております。」
「このような素晴らしい成果を上げられるのは、ひとえに皆様の日頃のご尽力の賜物ですね。」
★ここがポイント:
取引先に対しては「称揚」のような評価の言葉よりも、「学びたい」「素晴らしい成果」という事実への賛辞と、相手の努力のプロセス(ご尽力)に焦点を当てるのが大人のマナーです。相手も「お、しっかり見てくれているな」と好印象を持ってくれます。
まとめ:言葉は「武器」ではなく「クッション」として使おう
今回は、過去の僕の黒歴史とともに「称揚」という言葉の罠と、角が立たない大人の言い換えフレーズについてお届けしました。
ビジネスパーソンとして経験を重ねていくと、つい難しい言葉や専門用語を使って知的アピールをしたくなる瞬間があります。でも、本当に仕事ができる人、社内外で愛される人というのは、難しい言葉を知っている人ではなく、「相手が心地よく受け取れる言葉を選べる人」なんだと、中間管理職になった今なら痛いほど分かります。
若手の頃の僕のように、良かれと思った一言で周囲を凍りつかせる前に……今日から使えるスマートな言い換えを味方につけて、円滑で気持ちの良い人間関係を築いていきましょう!板挟みの毎日に疲れた時こそ、言葉のクッションを大切にしていきたいものですね。
