「隘路」の一言で商談を凍りつかせた、あの日の苦い記憶
「あ、やっちまった……」
あれは数年前、大切な新規の業務委託プロジェクトでのことでした。先方から提示されたタイトなスケジュールと複雑なフローに対し、若気の至りでイキりたかった私は、つい会議の場でこう発言してしまったのです。
「その進め方だと、あちこちに隘路(あいろ)があって現実的ではないですね」
……言った瞬間に、同席していた上司の顔が真っ青になり、取引先の担当者の方々の表情がスッと冷めていくのが分かりました。後から上司に別室へ呼び出され、「お前、かっこつけて難しい言葉使ってんじゃねぇよ!『隘路』なんて、相手を詰問してるみたいに聞こえるんだよ!」と、それはもう盛大に大目玉を食らったものです。トホホ……。
ビジネスパーソンとして少し知識がつくと、ついつい「隘路」や「懸念事項」といった少し硬い専門用語を使いたくなってしまうんですよね。でも、特に「断る」「指摘する」というネガティブな文脈において、こうした難解な言葉は相手に「自分たちが批判されている」という防衛本能を働かせてしまいます。中間管理職の今なら、あの時の相手の凍りついた空気の理由が痛いほどよく分かります。
なぜ「隘路」という言葉は地雷になってしまうのか?
「隘路」という言葉の本来の意味は、「通りにくい狭い道」「物事の進行を妨げる障害」といったものです。辞書的には間違いなく正しいビジネス用語ですし、社内のリスク分析の場などであれば通じることもあります。
しかし、これが取引先との折衝や、他部署との調整の場になると話は別です。相手が苦労して練り上げた提案に対して「そこは隘路ですね」とバッサリ切ってしまうと、以下のような印象を与えてしまうんです。
- 「自分たちの計画の不備を上から目線で指摘されている」ような不快感
- 「やる気がないのか?」と拒絶されたような冷たさ
- 難解な言葉を使うことで、マウントを取られているような威圧感
板挟みに悩む私たち30代営業マンにとって、相手との関係性にヒビを入れる言葉ほど恐ろしいものはありません。NOを伝えるときは、相手のプライドや努力に敬意を払いつつ、客観的な事実として伝えるクッション言葉が不可欠なんですね。
ちなみに、こうした「断り・辞退」のシーンでの言い間違いや地雷踏みについては、過去にこんな失敗もやらかしています。気になる方は、「それ、無理目ですね」で取引先が激怒!?角を立てずにNOを伝える30代からの『大人の言い換え術』もぜひ参考にしてみてください。若かりし頃の私の恥ずかしい同志が見つかるはずです(笑)。
ここで、大人な言い換えの登場です…!
相手を怒らせず、プロジェクトの停滞を防ぎつつ、スマートに「ここがネックです(NO)」と伝えるためには、どう言い換えればいいのでしょうか?
ポイントは、「障害」という言葉を主語にするのではなく、「私たちが懸念しているリスク」や「一緒に乗り越えるべきポイント」に変換することです。
1. 「慎重に進めたいポイント」に変換する
【NGな例】
「この企画、ここが最大の隘路ですよね」
⇒ 相手の計画を否定しているように聞こえ、議論が硬直します。
【大人の言い換え】
「非常に魅力的なご提案ですが、こちらの工程については、少し慎重に進めさせていただきたいポイントかと存じます」
★ここが大人!
まず「魅力的なご提案」と相手を肯定しつつ、「隘路」という棘のある言葉を「慎重に進めたいポイント」と言い換えることで、建設的な協議の雰囲気を保つことができます。
2. 「クリアすべき課題」に変換する
【NGな例】
「法務面の隘路をクリアしないと動きません」
⇒ 相手に責任を押し付けているような冷たい印象を与えます。
【大人の言い換え】
「安全に進めていく上で、いくつか事前にクリアしておきたいステップがございますので、そちらをご相談させてください」
★ここが大人!
「隘路」を「クリアしておきたいステップ」と言い換えることで、障害をただ指摘するのではなく、一緒に解決に向かう姿勢(チーム感)を演出できます。
まとめ:角を立てずに「NO」を伝えることが、一流のビジネスパーソンへの第一歩
あの頃、Slackやメール、そして対面での会話で「正しい言葉を使えば相手が動く」と勘違いしていた私は、多くの人の心を凍りつかせてきました。
でも、本当に仕事ができる人というのは、正しい用語を並べ立てる人ではなく、「相手に恥をかかせず、こちらの意図をスムーズに飲ませる人」なのだと、中間管理職になった今、痛感しています。
「隘路」という言葉を使いたくなったときは、ちょっと立ち止まってみてください。「おや、これは相手を攻撃していないか?」「もっと一緒に前を向ける言い方はないか?」と一呼吸置くだけで、あなたのビジネスパーソンとしての評価はグッと上がりますよ。
明日からのメールやチャット、そして商談で、ぜひこの「大人の言い換え術」試してみてくださいね。一緒にスマートなビジネスライフを送りましょう!
